取り付け騒ぎ(とりつけさわぎ)とは、特定の金融機関や金融制度に対する信用不安などから、預金者が預金・貯金・掛け金等を取り戻そうとして(=取り付け)、急激に金融機関の店頭に殺到し、混乱をきたす現象のこと。
概要
取り付け騒ぎは、経営破綻するという噂や、不確実な情報が引き金となることが多い。
取り付け騒ぎが起きると他の金融機関の預金者にも不安が強まり金融不安となることがあることから、金融システムの維持にあたる政府や報道機関は情報提供を通じて事態の沈静化につとめることになる。例えば1995年8月に木津信用組合が破綻した際には、当時の大蔵省が社会不安を煽ってはならないとしてこの言葉の使用を禁じたことから、報道機関は「取り付け騒ぎ」という言葉を使わずに預金者が殺到した状況を伝えていた(参考:大前研一、井沢元彦)。
取り付け騒ぎが起こった金融機関では、窓口での対応や多額の預金払戻しによって、業務が停滞する。加えて、金融機関は全預金を払い戻すことのできる現金を保有していることは無いので、預金高の減少で経営が立ちゆかなくなり、経営危機に陥ったり、最悪の場合、経営破綻に至る場合もある。なお実際に民間金融機関が破綻した場合は、預金保険法の定めにより預金は保護されるが、保護額を超える預金についての支払い額減殺が行われることが想定される。
取り付け騒ぎの防止
取り付け騒ぎの発生を予防し、また発生しても沈静化させるため、さまざまな方法が取られる。
- 金融規制によって銀行の貸しすぎを防ぎ、取り付け騒ぎの原因となる経営不安の発生を予防する。
- 預金保険制度により個々の預金者に一定額の預金を保障する。その場合預金者は取り付けの必要が無くなるため、他の人がそれを見て連鎖的に取り付けに参加して事態が悪化するようなことがなくなる。ただしこの場合、預金者が預金のリスクについて慎重に判断しようとはしなくなり、預金者のリスク回避行動を阻害する恐れがある(モラルハザードを参照)。
- 取り付け騒ぎが発生した場合、一時的に預金払戻を停止する(預金封鎖)。
- 取り付け騒ぎが発生した場合、中央銀行が「最後の貸し手」となって短期資金を融資し、資金ショートを防ぐ。
取り付け騒ぎの例
日本の例
- 昭和金融恐慌
- 豊川信用金庫事件
- 1973年、高校生同士の会話での「信用金庫なんて(強盗とか)危ないわよ」という冗談から「(豊川)信用金庫(の経営)が危ない」という経営不安の噂となり、豊川信用金庫が取り付け騒ぎに陥る。実際には経営は健全であった。調査により原因から噂が広がる途中経過まで明らかになった稀有な例。
- コスモ信用組合
- 1995年、預金者が預金払戻を求めて殺到した。東京都知事より業務停止命令を受け最終的には破綻。
- 木津信用組合
- 1995年、預金者が預金払戻を求めて殺到したことが「取り付け騒ぎ」の語を用いずに報道される。最終的には破綻。
- 能代信用金庫(現;羽後信用金庫)
- 1995年5月2日、「能代信金が清算へ…」と一部で報道されたことをきっかけに預金者が殺到。能代信用金庫の理事長,大蔵省の東北財務局長,日銀の秋田支店長が相次いで会見し,「清算」という報道は「事実無根」と否定したが混乱を収拾できず,最後の顧客が取引を終えたのは午後5 時30 分を回り,同日中に流出した預金額は約27億円に達した。その後、1997年3月24日に同じ秋田県内の大曲信用金庫による救済合併の結果、秋田ふれあい信用金庫が発足した(秋田ふれあい信用金庫は2009年7月13日にやはり同じ秋田県内の羽後信用金庫と合併し、新名称は羽後信用金庫となった。
- 紀陽銀行
- 山一證券
- 1997年12月、自主廃業。各地の支店には証券口座を解約する顧客が列を作った。
- 足利銀行
- 1997年に騒ぎとなった。なお当該騒ぎとは無関係に、2003年11月29日に特別危機管理銀行の認定を受けるに至った(預金は全額保護)。
- 佐賀銀行倒産メール事件
- 2003年12月、20代の女が知人に「佐賀銀行が26日に倒産する」という事実無根のメールを出し、それがチェーンメール化。噂が広がって取り付け騒ぎとなる。
その他の例
- 澳門匯業銀行(マカオ)
- ノーザン・ロック(イギリス)
- 2007年9月、サブプライムローン問題により資金繰りが悪化。イングランド銀行に支援を要請したことから信用不安が広がり、預金払い戻しなどを求める客が店頭やインターネット口座に殺到した。数日で預金残高の8%にあたる20億ポンド(約4600億円[1])が引き出された。英金融当局は「預金の安全性に問題は無い」と緊急声明を出し沈静化を図ったが最終的にはイギリス政府により一時国有化された。
- Second Life内の銀行
- メタバースサービスでリアルマネートレードを認めているSecond Life内にはユーザーにより開設されたいくつかの銀行サービスがあったがその中の一つの銀行Ginko Financialが賭博の禁止をきっかけに破綻した事を受け、運営者側が銀行業の規制を行う事になった。これを目前に引出しが増加していると言う。
脚注
- ^ 2007年9月15日現在の為替レート
関連項目
▼取り付け騒ぎと関連のある記事を表示しています。
動画検索:取り付け騒ぎ
▼
取り付け騒ぎの動画検索結果を表示しています。