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有鉛ガソリン

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有鉛ガソリン(ゆうえんガソリン)は、アルキル鉛を微量添加されたガソリンの事。

目次

概要

レシプロエンジンノッキングを防止する為に添加されており(アンチノック剤)、オクタン価も5~15ほど上昇する。

アルキル鉛としてはテトラエチル鉛 (C2H5)4Pb が最も多いが、四メチル鉛 (CH3)4Pb 、メチルエチル鉛なども該当する。いずれも猛毒物質(毒劇法の特定毒物)で呼吸や皮膚接触により容易に吸収され、中枢神経性の鉛中毒症状を引き起こす。

第二次世界大戦中や1970年代頃まで自動車燃料などに広く用いられていたが、有毒で大気汚染の原因となるため、日本では1975年以降、自動車用レギュラーガソリンは完全無鉛化された。1980年頃まではプレミアム(ハイオク)ガソリン用にわずかに使用されていたが、今日ではMTBEなど含酸素系添加剤に完全に取って代わられている。米国では大気浄化法(CAA)により、1995年に有鉛ガソリンが規制された。

一方、レシプロエンジンを動力とする航空機向けの燃料である航空ガソリン(アビエーションガソリンAviation Gasoline、略称はAvgas、アブガス、アヴガス)には今でも有鉛ガソリンが使用されている。

日本では法令により、自動車用の有鉛ガソリンは禁止されている。また、アルキル鉛含有ガソリンは着色が義務づけられており、航空用にはオクタン価別に、赤、緑あるいは紫に着色される(通常見られる自動車用の無鉛ガソリンはオレンジ)。

エチルの発見

米国の自動車会社ゼネラル・モーターズ(GM)の子会社デイトン・リサーチ・ラボラトリーにチャールズ・ケタリングの部下として勤務していたトマス・ミジリー1921年12月テトラエチル鉛 (tetraethyllead :TEL) をガソリンに添加するとエンジンノッキングを起こさなくなることを発見した。デイトン・リサーチ・ラボラトリーはが添加されていることを報告書や広告で触れないように、その物質を"エチル" (Ethyl) と呼ぶことにした。石油会社と自動車メーカー、特にその特許を保持していたGM社は、自分たちの利益とならないエタノール(エタノール入り燃料)に代わるものとして精力的に有鉛ガソリン化を推進した。[1] 1922年12月、ミジリーはこの功績でアメリカ化学会などからいくつかの賞を受賞している。

ガソリンへの鉛の添加は大気中に大量の鉛を放出する結果となった。ミジリー自身も、鉛中毒となり長期療養を必要とした。

GMはデュポン社に量産を委託し、委託業務の管理のために1923年4月、ゼネラル・モーターズ・ケミカル・カンパニー (General Motors Chemical Company) を設立しチャールズ・ケタリングが社長、ミジリーは副社長についた。しかし、工場関係者が病に犯され死亡にまで至ることからデュポン社は撤退。

1924年、デュポンの従来型製法での生産スピードに不満をもったGM社は、ロックフェラー率いるスタンダード石油社と組み、エチル・ガソリン・コーポレーションを設立し、ミジリーを部長とした。ニュー・ジャージーにあるベイウェイ・リファイナリーに工場を建設し、危険度の高い高温でのエチルクロライド製法を採用した。当初の2ヶ月の間に鉛汚染による症状が発生し5人が死に至った。工場はニュージャージー州により閉鎖され、スタンダード石油はテトラエチル鉛(TEL)の製造を禁止され、製造再開には州の許可が必要となった。

ノッキングしないこのガソリンは、"エチル・ガソリン"という名前で販売された。この有鉛ガソリンは、1960年代に環境問題となる。

廃止の経緯

日本で有鉛ガソリンが廃止された直接の原因となったのが、1970年5月東京都新宿区の牛込柳町交差点で発覚した「牛込柳町鉛中毒事件」である。

この交差点の周囲の住民が、慢性的鉛中毒に罹患している事が判明。これをマスコミが取り上げ、自動車の有鉛ガソリンが原因であるとして、社会問題となったのである。この為、政府、通産省運輸省(当時)は、自動車排気ガス中に含まれる鉛に対策を求められる事になった。そして、上記にある通り、経過措置を取りつつ、ガソリンを完全無鉛化することとしたのである。

ところが、後年の調査により、有鉛ガソリンを自動車に使用する事による実害は、ほとんど無い事が判明した。

テトラエチル鉛自体が毒物であり、一般消費者向けの商品に使用されないに越した事はなく、また、触媒(キャタライザー)の能力を保持するという観点からも、自動車用ガソリン無鉛化は意味のあるものではあった。

また、シリンダーヘッドが鋳鉄製が多かった関係で、無鉛化対策の難しかった小型トラックは、この時期を境にその主力をディーゼルエンジンへと移行してしまった。これは後に平成初期のディーゼル公害の遠因となるという側面も持っている。

有鉛ガソリン車

  • 1971年度末(=1972年3月末)までに製造された国産自動車(ガソリンエンジン搭載)は全て有鉛ガソリン仕様車。しかし、一部の車種(製造時期による)には有鉛と謳いながらも実質的に無鉛化対策(無鉛対応バルブシートに変更)を施している車種もある(当時は無鉛のハイオクガソリンが作れなかったため、ハイオク指定の高出力エンジン搭載車には必然的に有鉛ガソリンが指定された。この場合は現在の無鉛ハイオクがそのまま使用可能)。
  • 有鉛ガソリン仕様の自動車に給油する際には、無鉛ガソリンに専用の添加剤を加え、バルブシートを保護する必要がある。添加剤を使用しない場合には、バルブシートの摩耗が早くなるため、バルブクリアランスを調整する必要が生じることがある。
  • 趣味性の高い車種については、前のユーザーが無鉛対策エンジンに交換している可能性が高いので、有鉛・無鉛の別をチェックする場合には、エンジンの番号で確認する方法がある。
  • 有鉛ガソリンを長年使い続けた車両は、バルブシートの潤滑に必要な鉛が蓄積されており、添加剤を入れなくとも壊れる恐れはないという説もあるが定かではない。
  • 軽自動車等に多く見られたクランクケース圧縮式2ストロークエンジンでは、バルブ機構の潤滑も燃料と一緒に送り込まれるオイルによって行われているので(この種のエンジンにバルブシートなどない)、理論上は無鉛ガソリンで問題ない。
  • 一部のレーシングカー(競技専用車。自動車・オートバイ双方において)ではレースガスやアブガスの名称で航空機用有鉛ガソリンが使われることもある。高ノック耐性から使われるのであるが、無鉛ガソリン用に作られたエンジンでは使用できず、環境・人体への配慮や供給施設の問題から使用は減りつつあり、レギュレーション(ルール)により使用が禁止されていることも多い。

有鉛ステッカー

1975年(2月1日生産分より)のレギュラーガソリンの無鉛化に伴い、無鉛ガソリン対策車と有鉛ガソリン車と区別するために4種類のステッカー(3×5cm程度)が作られ、ガソリンタンクの周辺や窓ガラスに貼られることとなった。

  • 赤: 有鉛プレミアムガソリンを用いる車両(主に当時の欧州車、ハイオク指定の高出力エンジン搭載車)
  • 緑: 1/3程度有鉛ガソリンを混合する車両(主に当時のレギュラー仕様の無鉛対策以前のトラック)
  • オレンジ: 高速道路・山道を走行する際に有鉛ガソリンを用いる車両(当時のレギュラー仕様の無鉛対策以前の乗用車)
  • 青: 無鉛ガソリン対策車両

前記表記の中で赤色ステッカー表記の、有鉛ガソリン使用指定車(有鉛ガソリン)と、オレンジ色ステッカー表記(高速有鉛)使用条件指定推奨車は、自動車メーカーによって年式と車体番号による区分がされており、無鉛ガソリン(無鉛ハイオクを含む)を使用する際は自動車メーカー発行公式資料による確認、あるいは自動車メーカーに問い合わせによる確認を行う事例もある。又使用する際は点火時期調整等の調整を確実にしておくのが良いとされる。

排気ガス規制の関係もあり、場合によっては公道を走行出来ない可能性もある。

1980年頃までは、ハイオク=有鉛ガソリンであったため、いくつかの齟齬が生じている。製造時無鉛化対策を施している車両であっても、高オクタンを要求する場合は、当時は赤ステッカーを貼られていた。しかし、それらの車両は、無鉛プレミアムガソリンで問題ない。また、この頃の青ステッカー車は、取扱説明書などにハイオクガソリンを使用しないよう記述されているが、それは有鉛ガソリンの使用禁止という意味であり、現在の無鉛プレミアムガソリンを給油しても特に問題はない。

なお、有鉛ガソリンの製造・販売終了に伴い、現在製造されている新車には、このステッカーは貼られていない。また、製造時に青ステッカーを貼っていた自動車も、車検の際に剥がされてしまっている為あまり見る事は出来ない。

関連項目

出典

  1. ^ "The Secret History of Lead" The Nation, March 20, 2002

外部リンク

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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