着衣水泳(ちゃくいすいえい)とは、洋服など、水中で着用することを目的としない衣類を身に付けて、海や河川、湖、プールなどで泳ぐことである。水着やウェットスーツなど水泳用ではない衣服で泳ぐ場合、服が体に密着していないので水の抵抗が大きく、身体の動きも制限されるため、遊泳に巧みな人間でも、速く泳ごうとすると体力を消耗する。そのため、水難事故時の護身術として、競泳の泳法習得を目的にした訓練とは別に、着衣水泳の訓練が行われている国がある。また宗教、文化、習慣などの関係から水着では泳がず、着衣水泳が一般的な国、地域もある。
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運河の多いオランダやイギリス、オーストラリアなどでは、護身術としての着衣水泳の教育が、競泳よりも重視されている。特にオランダでは、子供が小学校に入学する5歳頃からスイミングスクールに通わせて、運河に落ちた場合を想定した着衣水泳を習得させる保護者が多い。
それに対して日本は、欧米諸国に比べて溺死率が高いことが指摘されており(イギリスの約9倍)[1]、教育現場での水泳の授業が競泳重視であることが原因ではないかと言われている。そのため近年は、水難事故を防止するため、年に1回程度、着衣水泳を取り入れる学校も出てきている。
着衣水泳の指導は、河川や湖などでの落水あるいは船の遭難の際に用いる護身術の習得を目指し、泳いで岸までたどり着くか、浮くことで救助隊が到着するまで生き延びる技術の習得を目的とする。ペットボトルやリュックサック、ビニール袋(ゴミ袋やレジ袋)などを膨らまして、浮き袋の代用品として使用することがある。
一般には、着衣状態で水に入ると、衣服が水を吸って重くなると思われがちである。しかし、それは水から出る時、出た後であって、着衣水泳指導の専門家は、着衣状態の方が浮力があって水に浮きやすく、これを体験して理解させられれば、着衣水泳の指導は大成功としている。そしてコートなどを着ていた場合(オランダの着衣水泳指導では取り入れられている)、浮力の面からも保温の面からも、脱がないように奨めている[2]。とくに靴については、通常の海水浴でも、浮力で最後の命綱となる運動靴を履いて行うことを推奨している[3]。
護身術としての着衣水泳とは別であるが、着衣での遊泳が推奨されるケースがある。
熱帯や亜熱帯などの低緯度地帯で海水浴を行う場合、強い紫外線を浴びる。また珊瑚礁域では造礁珊瑚の骨格由来の鋭くとがった石灰岩が海岸に多く見られ、これによる怪我の恐れがある。
これらによる皮膚の損傷を防ぐため、観光などでこうした地方で海水浴を行う場合は、Tシャツやラッシュガードなどを着用して露出部分を少なくすることが望ましいとされている。
日本では、競泳のみならず遊泳、レジャーのときも水着を着用するのが一般的である。しかし日本以外のアジア諸国では、気候、宗教、文化の関係から、着衣水泳が一般的である地域も多い。東アジアから東南アジアにかけては、台湾、タイ、フィリピン、ベトナムなど低緯度地帯の国々だけでなく、韓国でも、男女とも通常の衣服で泳ぐ人々が多いことが知られている。またイスラム教国、インド、イスラエルなどでは、女性は宗教上の理由から肌の露出を少なくするために着衣水泳を行う。そして日本でも、沖縄県など南の島々では陽射しが強いため、地元の人々が海で泳ぐ際、水着に着替えて肌を露出することは、まずない。また本土でも海岸や川沿いの地方では、地元の子供に学校以外の水泳で水着に着替える習慣がなく、普段着や学校の制服で着衣水泳を行っている地域も少なくない。言い換えれば、着衣水泳そのものが人並み以上の高度な泳力を要求される高等技術ということではない。
これ以外に、NASAでは、スペースシャトルが地球帰還時に海上に不時着した場合を想定し、宇宙飛行士に対する着衣水泳訓練を行っている。
日本武術である日本泳法の中には、着衣や甲冑(兜、鎧)を着用したまま泳ぐ泳法がある。