『精神障害の診断と統計の手引き』(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, DSM) とは、アメリカ精神医学会の定めた、精神科医が患者の精神医学的問題を診断する際の指針を示したもので、米国だけでなく、日本や他の国においてもしばしば引き合いに出されるものである。
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1952年に初版 (DSM-I) が出されて以降、随時改定され、現在は第四版用修正版 (DSM-IV-TR) となっている。2010年以降に (DSM-V) の発表が予定されている。アメリカ合衆国を主に、世界で50万部以上が普及している。
DSMは、精神医学の方面で革命的なアプローチをもたらしたものとして知られている。普及した理由は、
ただし、診断基準の内容や疾患分類の妥当性については疑問視する声も少なくなく、政治的・経済的な圧力に左右された経緯のある事から純医学的概念ではないとも指摘されている。
DSMにおいては、各疾患においてA・B・Cの診断基準が示され、「AからCの全てが当てはまる場合」その精神疾患であると診断される。
A・Bは具体的な病像が列挙されるが、C基準は「その症状が原因で職業・学業・家庭生活に支障を来している」となっている。
C基準が無ければ、世間の誰もがDSMに挙げられたいずれかの精神疾患の基準を満たしてしまうからである。特に人格障害においてはその傾向が強い。
本書には、「DSM-IVは、臨床的、教育的、研究的状況で使用されるよう作成された精神疾患の分類である。診断カテゴリー、基準、解説の記述は、診断に関する適切な臨床研修と経験を持つ人によって使用されることを想定している。重要な事は、研修を受けていない人にDSM-IVが機械的に用いられてはならない事である。DSM-IVに取り入れられた各診断基準は指針として用いられるが、それは臨床的判断によって生かされるものであり、料理の本のように使われるものではない。」と書かれており、非専門家による使用を禁じている。
あくまでも症状、あるいは患者との問診で診断が行われているため、例えば手引きを読んで症状を偽られる詐病との区別がつかないと言う意味では科学的な根拠は無いと批判が存在する。また、近年の目覚しい脳解析学や脳神経科学等の進展により、精神科医によるDSMを基準とした問診による診断が時代遅れになりつつあるとの主張も存在する。日米などで精神科医による精神鑑定結果や診断名が異なることは往々にしてあり、誤診や患者の詐病もあることなどから、日本においては精神科での診断を問診から脳科学的な客観的根拠を持たせるように切り替えようと各大学や研究機関で研究が始まっている[1]ただし脳解析学や脳神経科学等はいまだに初期の段階であり脳内の物理現象がどのように心理的現象として具現化するかは因果関係はいまだはっきりしていないことが多い。
"Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders" の訳語として「精神障害の診断と統計の手引き」、「精神疾患の分類と診断の手引」(ISBN 4-260-11886-2)、「精神疾患の診断・統計マニュアル」(ISBN 4-260-11889-7)、「精神疾患診断統計マニュアル」などがあり、定訳と呼べるものは無い。多くの場合、単に DSM と呼ばれる。