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(かみ)とは、植物などの繊維をくっつけ合わせ、薄く平(たいら)にしたもの。日本工業規格 (JIS) では、「植物繊維その他の繊維を膠着させて製造したもの」と定義されている[1]

目次

概要

狭義の紙は、植物繊維を水に分散させてから、簀の子の上に広げ、脱水・乾燥して作る。広義の紙には、原料として金属合成繊維を用いたものや、水を使用しない乾式で製造したものが含まれる。例えば、不織布は紙の一種として分類されることがある。

用途は、情報の記録・伝達を目的とした筆記印刷をはじめ、包装衛生などさまざまなものがある。

紙の物性

紙の原料である植物繊維は、セルロースが主成分である。

セルロースは、水素結合によって結びつく性質がある。紙を構成する植物繊維がくっつき合うのは、主にこうした水素結合のためである。一方、水素結合は水が入るとすぐ切れるため、防水加工していない紙は水濡れに弱い。

紙の分類と用途

和紙と洋紙

紙は、原料により和紙と洋紙に分類される。割合をみると、現在は木材原料としたパルプから、機械を使って製造した洋紙が多くの割合を占めている。

和紙

和紙は、7世紀初めまでに中国から伝来した紙が日本独自に発展したもので、ガンピコウゾカジノキなどが原料である。和紙は現在でも手漉きで作られているほか、1900年代からは機械抄き和紙も製造されている。

詳細は「和紙」を参照

洋紙

現在の洋紙は、主に木材を主原料に機械を使って製造する。日本では1873年に、欧米の機械を導入した初の洋紙工場が設立された。なお、木質紙が主流になる以前、洋紙の主原料は木綿のぼろやだった。

紙と板紙

紙の中で、主に包装用に使われる厚い紙を板紙(ボール紙)という。

詳細は「板紙」を参照

経済産業省による分類

経済産業省(旧通産省)では1948年以来、紙・板紙・パルプの品種分類を所管しており、「生産動態統計分類」で紙を分類している。2002年以降の分類は次の通り。

新聞巻取紙

新聞に使用される新聞紙のこと。「新聞用紙」とも呼ばれる。

印刷・情報用紙

印刷用紙は印刷されることを前提とした紙を、情報用紙は情報システム用の紙を指す。経済産業省の分類では、以下の5つに分類されている。

非塗工印刷用紙
表面を顔料などで塗工していない印刷用の紙。ただし、筆記性や表面強度を改善するため、デンプンなどの薬品が表面に塗布されることも多い。
化学パルプの使用割合により、上級印刷用紙(100%、上質紙)、中級印刷用紙(40%から100%、中質紙および上更紙)、下級印刷用紙(40%未満、更紙)に分類される。辞書本文などに使われるインディア紙などの薄葉紙も含まれる。
塗工印刷用紙
上級印刷用紙や中級印刷用紙を原紙とし、表面に塗料を塗布した印刷用紙。塗料の量などにより、アート紙・コート紙・軽量コート紙などに分類される。詳細は塗工紙を参照。
微塗工印刷用紙
1987年頃に登場した比較的新しい品種で、塗料の量が塗工印刷用紙よりも少ない。
特殊印刷用紙
色上質紙・官製はがきなどを指す。
情報用紙
コピー用紙インクジェット用紙ノーカーボン紙、感光紙、感熱紙などを指す。


包装用紙

印刷用紙より強度があり、包装紙封筒に使用される紙である。

未晒し包装紙は漂泊されておらず茶褐色。重袋用両更クラフト紙、両更クラフト紙などの種類がある。晒し包装紙は晒しクラフトパルプが原料で、純白ロール紙、晒しクラフト紙などの種類がある。

衛生用紙

ティッシュペーパートイレットペーパー紙おむつなどの用途に使用される吸水性を持つ紙である。

雑種紙

工業用と家庭用に分類される。トレーシングペーパー合成紙、絶縁紙、剥離紙、ライスペーパー(紙巻きタバコの巻紙)、書道用紙などが該当する。

生産量

2005年、世界では約3億6,640万トンの紙が生産された。

日本の生産量は、3,146万トン(全世界の8.4%)。紙・パルプ・紙加工業製造業の市場規模は、約7兆1,300億円。この金額は製造業の約2.4%を占め、製造業24種中第13位である(2005年時点)。

紙の原料

紙の原料は、現在の洋紙では、木材と古紙がほとんどである。木材が紙の原料となったのは、19世紀後半からで、それより前は非木材植物が原料となっていた。また、近年では製紙による森林伐採を抑制する観点から、ケナフなどの非木材植物が注目される場合もある。

非木材植物

紙の原料として使われた非木材植物には、次のものがある。いずれも、安定供給や品質の面から木材の代替にはならないとされており、現在では特別な用途で使われている。

アサ
アサやそのぼろは、中国で紙が発明されたときの主原料だった(リネンパルプ)。
カジノキ・ガンピ・コウゾ・マユミ・ミツマタ
カジノキガンピコウゾマユミミツマタはいずれもその樹皮が紙の原料として、中国・日本などで使われた。このうち栽培が比較的容易なコウゾは、現在和紙の主原料となっている。また、ミツマタは日本紙幣の原料として混ぜられている。
竹紙は、中国で時代(7世紀)から作られ、時代(10世紀以降)には竹が紙の主原料となった。
(稲わらや麦わら)は、中国では唐時代から紙の原料として使われた。また、日本では1890年代頃は洋紙の主原料だった。藁には、繊維が細くて短すぎるため弱い紙しかできない、年に1回しか収穫できず腐りやすいため保管が難しい、などの問題点があった。
亜麻
亜麻やそのぼろは、イスラム世界で紙の主原料となった。ヨーロッパでも木材以前はよく使われた。
木綿
木綿のぼろ(ラグ)は、欧米で木材以前は紙の主原料であった。しかし、15世紀に印刷技術が確立して紙への需要が大きくなると供給不足になり、木材からの製紙方法が開発される契機となった。日本でも、製造開始直後の1880年代頃は洋紙の主原料だった。また、綿花の加工途中で生ずる地毛などの短繊維(リンター)を原料として紙を漉くこともできる。木綿のぼろから作られるパルプをラグパルプ、綿花の地毛などの短繊維から作られるパルプをリンターパルプという。なお、通常の木綿は、繊維が長過ぎるため、製紙には使いにくい。
サトウキビ
インド・中国や南米諸国では、製糖時に発生したサトウキビの絞りかす(バガス)からパルプを製造している。バガスパルプは多くの場合、製糖工場に隣接したパルプ工場で生産される(三島製紙 - 砂糖キビの絞りかすから生まれたバカス紙について参考)。
マニラアサ
マニラアサ(アバカ)は、フィリピンなどで栽培されているバショウ科の植物。アバカパルプは繊維が細長いため、しなやかで強い紙を作ることができる。現在、日本紙幣の主原料となっているほか、ティー・バッグ掃除機の紙パックの原料となっている。
ケナフ
ケナフは木に近い性質を持ち、成長が非常に早いため、木材の代替候補として注目された。

木材

木材は、1840年代に木材パルプの製造方法が確立して以来、紙の原料として使われるようになった。日本では、1889年に最初の木材パルプ工場が建設された。

針葉樹と広葉樹

木材パルプの原料にはもともと針葉樹が使われており、日本では1960年代から広葉樹も使われるようになった。

針葉樹の繊維は広葉樹の繊維より太く長いため、一般的に針葉樹から製造した紙の方が強い。強度が求められる新聞巻取紙や紙袋、封筒、飲料用紙パックなどでは針葉樹が使われることが多い。一方、現在の印刷・情報用紙の多くは、広葉樹が主原料になっている。

輸入木材チップ

日本では1965年から、大型専用船でアメリカオーストラリアニュージーランドチリ中国などから輸入した木材チップを紙の原料として使うようになった。輸入木材チップは、1980年代以降の円高などの影響もあって割安なことから、現在では国内の木材より多く使われている。

木材チップは、製材の背板などの残りや間伐材、廃材などから製造される物もあるが、製紙原料用に植林されたユーカリやアカシアなどの木材から生産されたものが多くなっている。

古紙

古紙を元に紙を作ることは、紙の発明直後から行われていたと考えられる。

現在、古紙の利用率は、世界で約50%と推定されている。日本では、約60%である。

紙の作り方

紙は、植物繊維から次の手順で作る。

  1. 植物繊維を取り出す
  2. 紙をすく
  3. 脱水・乾燥する

こうした紙の作り方は、古代中国で発明されて以来、基本的には変わっていない。中国で末の1637年に書かれた『天工開物』では、竹紙の作り方を次のように記述している。

  1. 斬竹漂塘 - 竹を切り、ため池に漬ける
  2. 足火 - 十分に煮る
  3. 蕩料入簾 - 竹麻を簾(れん)ですく
  4. 覆簾壓紙 - 簾をひっくり返し、紙を積み重ねる
  5. 透火焙乾 - 火を通し、紙を焙り乾かす

植物繊維を取り出す

伝統的な製紙方法では、原料となる植物や木綿やアサのぼろを、アルカリ性の溶液で煮て、軟らかくする。こうして取り出した植物繊維は、パルプに相当する。また、古紙を水につけてパルプを作ることもできる。例えば、牛乳パックからパルプを作ることができる。

叩解(こうかい)

植物から繊維を取り出して紙をすくときには、パルプを叩き、繊維が切断・水和・膨潤・絡み合うようにする作業が必要である。こうした作業を叩解という。パルプを叩解すると、繊維はまず内部フィブリル化し、次に外部フィブリル化する。

内部フィブリル化
繊維の組織がゆるみ、軟らかくなる。
外部フィブリル化
繊維の表面から、ごく短い繊維の束(フィブリル)が出てくる。

紙をすく

水に溶かしたパルプを簀の子すのこ)や網の上に広げることを「すく」という。「すく」は、手で行う場合は「漉く」、機械で行う場合には「抄く」と表記する。手漉きの場合、紙は1枚ずつすく。一方、機械抄きの場合は連続して紙をすくため、高速で紙を製造できる。

洋紙の製造

洋紙の製造では、幅広の紙を機械を使って連続的に抄くため、大量生産が可能となっている。洋紙製造には、次の工程がある。

  1. パルプ化工程
  2. 調成工程
  3. 抄造工程
  4. 塗工工程
  5. 仕上・加工工程

パルプ化工程

パルプは、その後の工程と同じ工場の中で製造する場合と、別の工場で製造する場合がある。パルプ製造とその後の工程を両方とも行う工場は、紙パルプ一貫工場と呼ばれる。

洋紙の製造過程では多くの場合、木材からパルプを製造する。木材から製造するパルプは、製造方法により機械パルプと化学パルプに大別される。現在、化学パルプでは、クラフトパルプが一般的である。また、古紙から作るパルプも多く用いられており、古紙脱墨パルプと呼ばれる。

白い紙を作る場合、パルプ製造過程でパルプを漂白する。漂白したパルプは、晒しパルプと呼ばれる。

詳細は「パルプ」を参照

調成工程

調成工程では、各種パルプを混合し、叩解し、薬品を添加する。叩解には、かつてはビーター、現在はリファイナーという機械が使われる。調成工程を経たパルプを、紙料という。

抄紙工程

抄紙工程では、抄紙機を使い、紙料を1%程度に水で薄めたものを原料に、次の工程で紙を抄く。

  1. ワイヤーパート
  2. プレスパート
  3. ドライヤーパート

ワイヤーパート

紙料を、網(ワイヤー)の上に流して薄く平(たいら)にすることで、湿紙を作る。この工程で水分が重力によって脱落し、紙料の水分は99%(濃度1%)だったのが、湿紙では80%程度になる。

プレスパート

湿紙にフェルト(毛布)を当てて上下から圧縮することで、水分を搾り取る。この工程で、湿紙の水分は55%程度になる。

ドライヤーパート

湿紙を加温して水分を蒸発させ、水分が8%程度になるまで乾燥させる。

塗工工程

塗工紙の場合は、コーターを使い、紙の表面を顔料などで塗工する。コーターには、抄紙機と直結することで抄紙・塗工を1工程とするオンマシン式と、抄紙とは別工程とするオフマシン式がある。

仕上・加工工程

乾燥し、抄紙機またはコーターから出てきた紙は、次の工程で仕上・加工する。

  1. カレンダリング
  2. リールによる巻き取り
  3. ワインダーやカッターで断裁
  4. 包装
  5. 出荷

カレンダリング

紙の表面に、カレンダーを使って圧力をかけ、光沢や平滑性を高める。ただし、このとき紙の厚さは減少する。カレンダーは、金属ローラーと弾性ローラーの組み合わせ(ニップ)から構成される機械である。コーターと同様に、カレンダーにはオンライン式とオフライン式がある。

カレンダーには、スーパーカレンダーとソフトカレンダーの2種類がある。

スーパーカレンダー
一般に用いられるカレンダー。ニップ数が大きくなるほど紙の光沢や平滑性は高くなる。通常の印刷用紙では8から12ニップ、アート紙などでは10から12ニップのものが用いられる。
ソフトカレンダー
紙の厚さが減少するのをできるだけ避けたい場合に用いる。紙は表面の温度を高くすると光沢が出るため、圧力を小さくする代わりにローラーの表面温度を100度から200度程度にする。ニップ数は、2から4である。

洋紙に添加される薬品

洋紙に添加される主な薬品は次の通り。薬品は、調成工程でパルプに混合されたり、塗工工程で紙の表面に塗工されたりする。

サイズ剤
水性インクなどのにじみを防ぐ。かつてはロジンと硫酸バンド(硫酸アルミニウム)が広く使われており、そうした紙は酸性紙という。酸性紙は寿命が50年から100年で、図書館での蔵書の保管などで寿命が短すぎることが大きな問題になった。中性紙は、硫酸バンドの代わりに中性サイズ剤を用いており、寿命は酸性紙の4倍から6倍といわれている。現在、印刷用紙やPPC用紙では中性紙が使われることが多く、酸性紙は新聞や雑誌など長期保存の必要がない用途で使われる。
填料
繊維間の隙間を埋め、不透明度・白色度・平滑度・インク吸収性を向上させる。従来からカオリンなどのクレー(白色粘土)やタルク(滑石)が使われているほか、中性紙では炭酸カルシウムが使われる。填料は、印刷用紙やPPC用紙などには5%から20%程度、辞書などに使う薄葉印刷用紙では25%程度が含まれる。
紙力増強剤
紙の表面強度を高くする。デンプンやポリアクリルアミドが使われる。
染料
染料は、紙に色を付けたり、白さを高めたりする。白さを高めるには、青色の染料が使われる。また、書籍などでは、文字を読みやすくするため、淡い黄色の染料を使う。蛍光染料は、白さを特に高めるために使う。
塗料
美感や平滑さを高める目的で塗料が紙の表面に塗布されることがあり、そうした紙は塗工紙という。塗料は、カオリンや炭酸カルシウムなどの白色顔料と、デンプンなどの接着剤を混合して作る。

紙の歴史

紙発明以前

紙が発明・普及する前から、人間は世界各地でさまざまなものを文字などを筆記する媒体として利用してきた。例えば、次のものが知られている。

筆記媒体 地域 説明
粘土板 古代メソポタミア 泥を、板の形にして干したもの
パピルス 古代エジプト、のち西アジア・ヨーロッパ パピルス(植物)の幹を薄く削ぎ、直角に交叉させ、おし叩いて接着したもの。なお、「papyrus」は英語で紙を意味する「paper」の語源となっている。
羊皮紙 西アジア・ヨーロッパ 動物の皮を筆記用に加工したもの。
貝多羅葉 インド 椰子の葉を筆記用に加工したもの。写経などに使われた。かさばるため、大量の筆記には不向き。
木簡竹簡 中国・日本 木や竹を、で筆記できるように細長い板にしたもの。丈夫であり、削って再利用できる利点があることから、紙が普及してからも荷札などで使われた。
絹帛 中国・日本 絹の布。

中国での紙の発明と改良

世界最古の紙は現在、中国甘粛省放馬灘(ほうばたん)から出土したものだとされている。この紙は、前漢時代の地図が書かれており、紀元前150年頃のものだと推定される。次いで古いのは、紀元前140年87年頃のものとされる灞橋麻紙(はきょうまし)である。灞橋麻紙は陝西省西安市灞橋鎮で出土した。

史書に残された記録では『後漢書』で、105年蔡倫が樹皮やアサのぼろから紙を作り、和帝に献上したという内容の記述がある。こうした記述から、紙の発明者は蔡倫だとされたこともあった。現在では、蔡倫は紙の改良者であるといわれることが多い。

紙は軽くかさばらないので、記録用媒体として、従来の木簡竹簡、絹布に代わって普及した。

西晋の時代(3世紀)には、左思の『三都賦』を写すために紙の価格が高騰したという記録が『晋書』に記載されており、「洛陽の紙価を高からしむ」という故事成語になっている。

紙はその後も改良され、時代(8世紀)には樹皮を主原料とした紙や、竹や藁を原料として混ぜた紙が作られるようになった。の時代(10世紀以降)には、出版が盛んとなったため大量の紙が必要となり、竹紙が盛んに作られた。明末の1637年に刊行された『天工開物』には、製紙の項目で、竹紙と樹皮を原料とした紙の製法を取り上げている。

紙は、上流階級を中心に広く使われたが、安価なものではなかった。11世紀の詩人であった蘇舜欽は、自分が勤めていた役所で出た反古紙(書き損じの使い物にならない紙)を売って、その代金で宴会を開いたために横領で糾弾されている。反古紙であっても高値で取引されていた様子がうかがえる。

また、紙の製法は、中国から地理的に近かった日本、朝鮮、ベトナムなどには早い時期に伝播した。

朝鮮半島
4世紀から6世紀に伝えられた。この地域に自生するコウゾから良質な紙が作られるようになり、中国へも多くの紙が朝貢された。
日本
7世紀までに伝えられ、その後は和紙として独自の発展を遂げた。また、『百万塔陀羅尼』は現存する世界最古の印刷物である。

イスラム世界への伝播

紙の製法が中国からイスラム世界に伝わった契機は751年タラス河畔の戦いで、アッバース朝軍に捕えられたの捕虜に紙職人がいたためである。

サマルカンドでは、757年に製紙工場が造られた。イスラム人は、紙の原料として亜麻を使ったり、サイズ剤として小麦粉から作ったデンプンを使うなどの工夫をした。こうした紙はイスラム世界で広く知られるようになった。

その後11世紀までの間に、バグダッドダマスカスカイロフェズなどイスラム世界の各都市に製紙工場が造られた。紙は、イスラム世界で主要な筆記媒体となり、ヨーロッパへも輸出された。1144年には、当時タイファ(イスラム諸王国)の支配下にあったイベリア半島のハティバに、ヨーロッパ初の製紙工場が造られた。

ヨーロッパへの伝播

1276年イタリアファブリアーノで、イタリア初の製紙工場が造られた。これ以降14世紀までの間、ヨーロッパでの紙の供給地は、イタリアとなった。1282年には、ファブリアーノで透かしが発明されている。その後、製紙工場はヨーロッパ各地で造られ、アメリカでも1690年にフィラデルフィアに設立されている。

印刷技術の確立と原料不足

1450年頃にグーテンベルグにより活版印刷が実用化されると、印刷物が大量に造られるようになり、紙の需要は増大した。一方、こうした需要の増大は、慢性的な紙の原料不足を引き起こし、特に19世紀には大きな問題となった。当時、紙の主原料は亜麻や木綿のぼろであった。1855年頃のアメリカでは、ミイラをエジプトから輸入し、そこから剥ぎ取った亜麻布を原料として紙を製造していたという。

製紙工業の確立

ヨーロッパでは、製紙の機械化が進められた。叩解には、伝播した時点から水車を動力源に石臼を動かすスタンパーが使われており、1680年にはより効率的なホランダービーターが発明された。連続型抄紙機は、1798年にはフランスのルイ・ロベールによって小型模型が作られ、1826年にイギリスのドンキンが完成させた。

一方、紙の原料不足については、木材を使うことで解決された。1719年にフランスのレオミュールは、スズメバチが木材をかみ砕いて巣を作っている様子を観察した結果として、木材から紙を作ることができるという内容の論文を発表した。1840年、ドイツのケラーは砕木パルプを作るためのグラインダーを考案し、グラインダーは1846年に実用化された。また、1851年には苛性ソーダを用いた化学パルプの製造がイギリスで成功し、1854年に実用化した。当時、木材には針葉樹の丸太が使用された。尚、当時はまだ紙は貴重であり、西欧視察に訪れた日本人が鼻をかんで捨てた紙を、人々が争って奪い合ったという。

以降、20世紀にかけて砕木パルプ・化学パルプともに改良が加えられ、木材を原料とした紙が機械で大量生産されるようになった。

1940年代以降、クラフトパルプ製造法が確立され、広葉樹を利用できるようになった。また、1960年には木材チップをパルプ化する方法が開発された。

寸法・単位

紙の製造管理や商取引上では、次の寸法や単位が用いられる。

  • 寸法
  • 枚数 - 連(れん)
  • 重量 - 坪量(つぼりょう)と連量(れんりょう)

寸法

紙の寸法には、断裁に必要なまわりの余白を含めた原紙寸法と、製品に仕上げたときの寸法である紙加工仕上げ寸法がある。こうした寸法は、日本工業規格やISOにより規格化されている。

原紙寸法には次の種類がある。

種類 寸法(mm)
A列本判 625×880
B列本判 765×1085
四六判 788×1091
菊判 636×939
ハトロン判 900×1200

仕上げ寸法には、A列とB列がある。


詳細は「紙の寸法」を参照

枚数の単位

1連とは一定寸法に仕上げられた紙1,000枚(板紙の場合は100枚)のことで、紙取引の基準となる枚数である。小数点を使い、2.5連(2,500枚)のように表す場合もある。

重量の単位

坪量

坪量は、紙や板紙の基準となる重さを、単位面積である1m²あたりの重量で表す。単位はg/m²。坪量は紙の基本品質を表す、重要な項目である。米坪ともいう。元は1四方あたりの単位の重量のことを坪量と呼んだ(を参照)。

連量

連量は、一定寸法に仕上られた紙1,000枚(1連)の重量。寸法は日本の場合、板紙では実際に取引する紙の寸法、板紙以外では四六判(788mm×1,091mm)が一般的である。1連が1,000枚でないのが通常(例えば100枚)である用紙の場合には連量も変わる。

連量は、紙の重みだけでなく、厚みを比較する目安としても捉えられている。厚い紙は、私製ハガキで220kg、薄いものは純白ロール紙34kgがある。ただし、紙質によって同じ厚みでも密度は異なるため、あくまで目安。同質の紙同士で厚みを比較する際にはよい参考になる。

紙に関係する法令・規格

紙とコンピュータ

かつて、コンピュータが普及すると情報の記録や伝達はコンピュータに置き換えられるため、紙の消費は減るであろうとする予想があった。こうした紙の消費量を減らすことをペーパーレス化といい、情報伝達の効率が高くなることや、文書を保存・管理するコストが小さくなることが期待されていた。

しかし、コンピュータが高度に普及した現代においても、紙の使用量は減少することはなく、むしろ増加しているという現実がある。Abigail SellenとRichard Harperは、著書"The Myth of the Paperless Office"で、現在では仕事の多くが知識労働になっているため、紙の有効性は高まっていると主張した(ペーパーレス神話と現実参考)。

紙と環境問題

紙は、環境問題で議論の対象となることが多い。

日本国内で生産される紙の原料の約6割は古紙だが、残りの約4割は木材などを原料としたバージンパルプである。バージンパルプの原料には、丸太を製材に加工する際に発生する残材(端材)なども使われるが、丸太を2~3cmの大きさに砕いたチップが用いられている。チップは国内産のものもあるが、日本国外から輸入されるものの方が多い。チップの原料には、主にユーカリやアカシアなどの植林木が用いられている。しかし、植林を行なうためにその土地の天然林を伐採している事例もあるとの指摘がある。また、チップの原料には一部天然林から伐採された丸太も用いられており、環境団体からは、天然林の伐採対象には生物多様性が豊かな原生林も含まれていることが指摘されている。

関連項目

脚注

  1. ^ 日本印刷技術協会編、『製本加工ハンドブック 〈技術概論編〉』日本印刷技術協会(2006/09 出版)、ISBN: 9784889830880

参考文献

  • 日本紙パルプ商事株式会社 紙の知識とデータ集
  • 紙への道
  • 『知っておきたい紙パの実際2007』(紙業タイムス社、2007年) ISBN 9784915022937
  • 紙の博物館編『紙のなんでも小辞典』(講談社ブルーバックス、2007年) ISBN 9784062575584
  • 尾鍋史彦総編集『紙の文化百科事典』(朝倉書店、2006年) ISBN 4254101856
  • 山内龍男『紙とパルプの化学』(京都大学学術出版会、2006年) ISBN 4876988188
  • 門屋卓『新しい紙の機能と工学』(裳華房、2001) ISBN 4785361085
  • 王子製紙編『紙・パルプの実際知識第6版』(東洋経済新報社、2001年) ISBN 4492083553

外部リンク

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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