数学における集合(しゅうごう、英: set, 仏: ensemble, 独: Menge)とは、大雑把に言えばいくつか(有限または無限)の「もの」からなる「集まり」である。集合に含まれる「もの」のことを元(げん、element; 要素)という。
集合は、集合論のみならず現代数学全体における最も基本的な概念の一つであり、現代数学のほとんどが集合と写像の言葉で書かれていると言ってよい。
慣例的に、ある種の集合が系(けい、system)や族(ぞく、family)などと呼ばれることもある。実際には、これらの呼び名に本質的な違いはないが細かなニュアンスの違いを含むと考えられている。たとえば、方程式系(「相互に連立する」方程式の集合)、集合族(「一定の規則に基づく」集合の集合)、加法族(「加法的な性質を持つ」集合族)など。
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詳細は「素朴集合論」を参照
集合は「もの」の「集まり」である。集合の元(要素)として集められる対象となる「もの」は、数、文字、記号などをはじめ、どんなものでも(もちろん集合でも)構わない。
一方で、どんな「集まり」でも集合と呼んでよいわけではない。その「集まり」が集合と呼ばれるためには、対象が「その集まりの元であるかどうかが不確定要素なしに一意に決定できる」ように定義されていなければならない。
たとえば、トランプのスート全体 {♠, ♦, ♣, ♥} やトランプの数字全体 {A, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, J, Q, K} は集合の例である。トランプは(ジョーカーを除いて)これらの組
を符牒とする52枚のカードであるが、これもまた集合の一例になっている。とくにこれはスートの集合と数字の集合との直積集合の例であり、また 52 というのはこの集合の濃度 (数学)を表している。また、先のスートの集合、数字の集合の濃度はそれぞれ 4, 13 である。
| A | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | J | Q | K | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ♠ | (♠,A) | (♠,2) | (♠,3) | (♠,4) | (♠,5) | (♠,6) | (♠,7) | (♠,8) | (♠,9) | (♠,10) | (♠,J) | (♠,Q) | (♠,K) |
| ♦ | (♦,A) | (♦,2) | (♦,3) | (♦,4) | (♦,5) | (♦,6) | (♦,7) | (♦,8) | (♦,9) | (♦,10) | (♦,J) | (♦,Q) | (♦,K) |
| ♣ | (♣,A) | (♣,2) | (♣,3) | (♣,4) | (♣,5) | (♣,6) | (♣,7) | (♣,8) | (♣,9) | (♣,10) | (♣,J) | (♣,Q) | (♣,K) |
| ♥ | (♥,A) | (♥,2) | (♥,3) | (♥,4) | (♥,5) | (♥,6) | (♥,7) | (♥,8) | (♥,9) | (♥,10) | (♥,J) | (♥,Q) | (♥,K) |
集合を表すプレースホルダにはしばしばラテン文字の大文字 A, B, ..., E, F, ..., M, N, ..., S, T, ..., X, Y, ... など[1]を使い、集合の元は(とくに集合を表すのに使った文字に対応する)ラテン小文字 a, ..., e, ..., m, ..., s, ..., x, ... とすることが多い[2]。
詳細は「部分集合」、「包含関係」、「元 (数学)」、「帰属関係」をそれぞれ参照
集合と元、集合と集合などの間には含んだり含まれたりといった素朴な関係を考えることができる。
1 つも要素を含まないような集合を空集合といい、{} または ∅ と表す。如何なる集合も必ず空集合を部分集合として含むと考えられているが、各集合に包含されている空集合が何時如何なるときも同一のものであると考えるのは議論の便宜上必要な規約である。
集合の相等関係は、それらに帰属する元の相等によって定められる。つまり、2 つの集合が同じ元を全て含み、なおかつ異なる元をまったく含まないとき、2 つの集合が等しいという。集合 A と B が等しいことを A = B によって表す。これを包含関係を用いて表せば、
となる。
同じように「含む」といっても、帰属関係にあることと包含関係にあることとは異なる概念であって、混同してはならない。例えば、X ⊂ Y ⊂ Z ならば必ず X ⊂ Z であるが、X ∈ Y ∈ Z からは X ∈ Z は必ずしも導かれない。また、x ∈ A ⊂ B ならば x ∈ B であるが、x ⊂ A ∈ B からは x ∈ B を帰結することは一般にはできない。
具体的な集合を取り扱うためには、集合を具体的に記述する方法が必要である。たとえば集合に属する元をすべて列挙することがひとつの方法である。たとえば 10 未満の自然数に属する奇数であるもの全体の集合は
と記すことができる。このように「集合に属する元をすべて列挙すること」で集合を記述する方法を集合の外延的記法と言う。集合のある外延的表示が与えられたとき、
のようにそこに現れる元の順番を入れ替えたり、そこに含まれるのと同じ元をあらたに付け加えても、集合としてはもとのものと等しい[3]。
また、集合に属する元が満たすべき条件を明示することも集合を記述する方法のひとつである。
のように、「ある集合に属するために元が満たさなければならない、かつ満たせばその元はその集合に属すという条件を明示すること」で集合を記述する方法を内包的記法と言う。対象 x が集合 S に属する必要十分な条件が P(x) であるということを

などで表す。すなわち {x | P(x)} は P(x) を満たすようなすべての元 x から構成される集合であるという意味である。条件 P(x) はふつう「x が X の元であって、さらに条件 Q(x) を満たす」というような形で与えられることが多い[4]が、このとき定まる集合を {x | x ∈ X, Q(x)} のように書く代わりに、しばしば簡単に

などと略記する。集合 {x ∈ X | Q(x)} は X の部分集合を与える。また同様に、条件 P(x) が「x は別の元 y によって式 φ(y) として表され、y が別な条件 R(y) を満たす」というような形で表されるときは、集合に属するべき元を代表する文字 x を φ(y) で替えて、

と略記される。
集合の外延的記法と内包的記法は、必要に応じて使い分けられる。
を例にとると、A は外延的、B は内包的に記述されてはいるが、A = B である。
元を外延的に書きつくせない集合(後述の無限集合など)を考えるとき、たとえば自然数に属するすべての奇数からなる集合[5]
はしばしば、外延的に
のようにも書かれるが、"..." による省略部分は誤解を生じる余地があるため、このような記法はその省略された内容の意味が明らかである場合に限られる。
詳細は「濃度 (数学)」を参照
有限個の元からなる集合を有限集合(ゆうげんしゅうごう、finite set)と呼び、集合 A の元の個数を #(A), |A|, card(A) などの記号で表すことが多い。有限集合でない集合を無限集合(むげんしゅうごう、infinite set)という。無限集合に対しても「個数」の概念を広げて、濃度(のうど、potency、または基数、cardinal number, cardinality)というものを考える。個数を数える代わりに、ある集合を使って、その元で別の集合をラベル付け(indexing; 添字付け)して、一対一の対応がとれるかどうかを調べるのである。そうすると有限集合の濃度はちょうど元の個数で決まるので、ちゃんと無限集合への「個数」の拡張となる概念が定まっていることが確認できる。
無限集合はどれも「無限個」の元を持っているわけだが、どの無限もみな同じというわけではなく、濃度の概念ではたくさんの無限を区別して扱うことになる。たとえば、自然数と有理数が同じ濃度を持つ、自然数と実数は真に異なる濃度を持つといったような事実は数学を学ぶ者にとってよく知られた内容である。同様の事実に、平面 R2 と数直線 R は同じ濃度を持ち、平面を覆いつくす平面充填曲線と呼ばれる不思議な平面曲線が何種類も存在することが述べられる。より次元の高い空間でも同様で、空間を埋め尽くす空間充填曲線が構築される。異なる次元をもつ空間が同じ濃度をもつというのは、次元や濃度が一方が他方を測るようなものではない異なる尺度であることを表しているのである。
いくつかの集合を扱い、その関係性について論じるとき、もともと考えていた集合たちから新しい集合を作って調べるというのは有効な手段の一つである。これらの操作は、集合に対する演算と見なすことによって、集合族に関するいくつかの代数系を提供する。それらの代数系を抽象代数系と見なせば、抽象代数学の一般論を適用することでまたいくつかの概念を提供することになる。
詳細は「和集合」、「積集合」、「差集合」、「対称差」、「指示函数」をそれぞれ参照





指示函数はこれらの集合演算を 0 と 1 からなる世界の代数的な演算に置き換える手段を与える。

詳細は「直積集合」、「冪集合」、「配置集合」、「商集合」をそれぞれ参照
上記演算は、全体集合が一つ与えられ、演算の引数となる集合たちがその部分集合であるならば、その演算結果もふたたび同じ全体集合の部分集合となるようなものである。一方、必ずしもそれが期待できないような演算もある。



![X/{\sim} {}:= \{[x]\mid x\in X\}, \text{ where } [x] := \{y\in X\mid y\sim x\}.](/w/images/math/c/f/c/cfc90cc584d5895145bfe6def27d5a85.png)
詳細は「集合代数」、「集合族」をそれぞれ参照
集合からなる族 A を考える。A が集合演算についていくつかの性質を満たすとき、それらには特別の名前が与えられることがある。
やドイツ文字
で記したりする。このような入れ子構造は何重にも複雑な形で現われたり、同じものが違った見方をされたりするので、このような文字種の変更を行わないこともよくある。